渡辺図鑑

 

 

 

 

 

今は2月。

 

毎日同じことの繰り返し。

1人暮らしも始めてずいぶん長い。

いつも同じ電車に乗って、いつも同じ仕事をして、上司にも怒られる。帰っても慰めてくれる人はいない。 今日は帰ってお酒でも飲むかぁ〜

 

 

 

 

 

家に帰ってもご飯は作らない。作れないから。今日もコンビニ弁当。

冷蔵庫を開けたら缶ビールが1本しかない。

 

『買いに行くかぁ〜』

 

外は寒いからたくさん着込んで近くのコンビニまで歩く。缶ビールを適当に買ってぼ〜っと家の下まで帰ってきた。

 

 

『ん?誰か…寝てるのかな?』

 

そっと近づいたら急に目を開けるから目があった!と思ったら急に座った!!

 

『ぅわっ』

 

「あの…お腹が空いてこれ以上動けません。お嬢さん、僕を拾ってくれませんか?噛みません、しつけのできた良い子です。」

 

『えぇ?噛みませんって…あなた犬じゃあるまいし…』

 

 

 

名前も連絡先も、もちろん何の仕事してるかもしらない人を拾った。仕事してるのかな、とりあえず私の家に連れてきた。倒れてたし…

 

『カップラーメンしかないけどいいですか?はいどうぞ』

 

「…ありがとうございます!!」

 

『えっ、それ3分待たないと固いと思うけど』

 

麺を口にいっぱい含んだ彼はじっとこっちを見てる。

 

「…そんな待てないっす!」

 

 

固いってぼそっと聞こえてるけど(笑)

 

 

ご飯を食べたら帰ろうとする彼に、シャワー浴びて帰ります?なんて口走ってしまった。しまった、と思ったけどもう遅い。

 

 

「いいんですか???ありがとうございます!」

 

 

すっごい笑顔でお礼を言うなあ、なんて微笑んでしまった。

 

 

 

 

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わたしは、少し変わった夢を見た。

 

にしてもいい匂いがする夢〜美味しそう♡

夢に匂いなんてあったっけ?ん?卵焼きの匂い…ん?何か焼いて…る??えぇ?

 

急いで起き上がってキッチンを覗くと、夢でみた彼がキッチンに立ってる!あ!こっち向いた…!!!

 

 

「おはよう。」

 

ってえええ!?すっごい微笑んでるよ?ええ?って動揺が隠せないわたしに

 

「昨日のこと、覚えてない?」

 

えええ?なに?わたしなんかした?

あたふた焦って周りを見渡すとリビングの隣の部屋に寝袋と彼の昨日着てた服…

 

『ぇっと……しつけのできた…良い子…です………』

 

 

そんなあたふたするわたしに、落ち着いてる彼。

 

 

「ねえ、朝ごはんできたよ。食べないの?」

 

『えっ、作ってくれてたの?何もなかったでしょ』

 

「賞味期限ギリギリの卵が2個。あった。」

 

机に綺麗に並べられた美味しそうな朝ごはんを前に手で 2個 ってしてるこの人、こっちを見て微笑んでる…ってわたしもきっちり向かいの椅子に座ってしまった。

 

 

ご飯はどれもとっても驚くぐらい美味しくて、彼と笑顔で話してるうちに夢のことなんか忘れてた。

昨日のことも夢じゃないらしい。

わたしこの人拾ったんだ…。

これは現実なんだ…そう、だよね?

 

現実ってことは、今日も私は仕事に行かないと。そろそろ用意しなきゃな〜と食器を片し始める。

 

 

『すっごく美味しかった〜!誰かの作ったご飯なんて食べたの久しぶりで、なんか幸せ。』

 

「はは、よかった。きょうはお仕事?」

 

『うん。あ、そろそろ家出ないと…』

 

「あ、じゃあ俺も。もう出ないとね。ありがとうございました。」

 

って家を出る準備をし始める彼に思わず

 

『ね、ねえ…!あの…わたし…こんなに美味しいご飯食べたのほんと久々で!えっと…毎日こんなに美味しいあなたの朝ごはん食べれたらなあ…って!思って……その…行くとこないなら私の家にいてもいいよ!!…よかったら…毎日朝ごはん作ってくれない?』

 

そらそうだよね、彼びっくりしちゃってるじゃん…わたし何してん「ありがとうございます!!!俺、しょーたっていいます。名字は…ダサいから聞かないでほしいな。しょーたって呼んで。」

 

 

わ、これ、驚きの展開だ。彼ここにいるんだ。嬉しそうに頭下げてる。ってことは?今日から同居じゃん…しょうた…ね

 

『ダサいの?わかった(笑)あ、わたし、さやかっていいます。よろしくね、しょうた。』

 

「…さやかさん。」

 

『さやかでいいよ〜(笑)』

 

照れたみたいに笑う彼はかわいいなって思ってしまう。

ってそんなこと思ってないで早く仕事行かないと遅刻しちゃう!

 

急いで玄関に向かうとしょうたがこっちに来た。なんとなく嬉しくて、ずっと1人だったからかな(笑)笑顔になっちゃう。靴を履いてから振り返ってみた。鍵もひとつ渡したし、何かと場所も教えた…し、大丈夫だよね。

 

『えっと、じゃあ、いってきます。』

 

「うん。いってらっしゃい、さやか。」

 

わたし、これから毎日こんなに幸せな朝になるのかな。人がいるって幸せ…

 

今日も私は、いつもと同じ電車に乗って、

いつもと同じ仕事をして、うんざりだけど、ひとつ違うこと。

 

お昼休みに、しょうたが作ってくれたお弁当を食べてます。おいしい〜(笑)

 

 

 

 

 

 

次の日の朝、しょうたがこっちをじって見てる。

 

 

「さやか、おれ、ここに半年いてもいい…?長い…かな??」

 

『え?ん〜…長い…けど、いいよ。行くとこないんでしょ?わかったよ(笑)。』

 

 

カレンダーで半年後を見ると、私の誕生日ってことに気づく。

 

「ん?さやか誕生日なんだ。いくつになんの?」

 

『え?んー23?かな』

 

「へえ〜そうなんだ。」

 

『しょうたはー??』

 

「ん?おれはー秘密かな(笑)」

 

なんてただの同居人は、これ以上踏み入れないわけで。私はしょうたの、ただの同居人。

 

半年か〜〜